子育て世帯の2台目
一台で回らなくなったら、家計から考える
朝の七時半、保育園の送りと、私の出勤の時間がちょうど重なります。片方が車で出ると、もう片方は自転車で駅まで走るか、次のバスを待つことになります。子どもが一人のうちは、この綱渡りでなんとか回っていました。下の子が歩きはじめた頃から、少しずつ足りなくなってきたのです。朝、玄関で抱っこ紐と自転車の鍵を両手に持ったまま、数秒立ち尽くす日が増えました。「もう一台あれば」と口に出したとき、私が最初に開いたのは中古車のサイトではなく、家計簿でした。車は、買った日の値段より、そのあと毎月かかるお金のほうが、ずっと長く続くからです。
一台で回らなくなる理由を、三つに分けて書き出す
二台目の話に入る前に、私は「なぜ一台では足りないのか」を紙に書き出すようにしています。理由があいまいなまま台数だけ増やすと、増えた維持費だけが手元に残ることがあるからです。足りなさには、だいたい三つの顔があります。時間帯のぶつかり、距離、頻度です。この三つは似ているようで、打つ手がまるで違います。書き出してみると、我が家に当てはまるのはどれか一つ、あるいは二つだった、ということもよくあります。
一つ目は、時間帯のぶつかりです。朝の送迎と通勤が、同じ三十分に集中している。そういう家庭です。日中や夜は、むしろ車が車庫で休んでいることもあります。これは台数というより、時間割の問題に近いです。
二つ目は、距離です。通勤は片道二十キロ、保育園はその反対方向、週末の買い出しはまた別の街。一台で全部を担おうとすると、走行距離が伸び、家族の予定も正面からぶつかります。土曜の午前に、上の子の習い事と、下の子の予防接種が別の場所で重なった日のことを、私は今も覚えています。
三つ目は、頻度です。増える一台を本当に使う日が、週に何日あるのか。毎日なのか、平日の朝だけなのか、月に数回の習い事の送りだけなのか。ここの見立てを甘くすると、あとで「思ったより乗らなかった」となりがちです。逆に、少なく見積もりすぎて、結局レンタカーやタクシーを何度も足すことになる家庭もあります。
時間帯が重なっているだけなら
もし足りない原因が時間の重なりだけなら、台数を増やす前にできることがあります。出勤を十五分ずらす、送迎の曜日を夫婦で分ける、駅までの一区間だけ電動アシスト自転車に替える。こうした工夫で回るなら、余分な一台を毎月かかえずに済みます。私はこの確認を、めんどうでも飛ばさないようにしています。工夫で消える不便のために、車をもう一台持つのは重いからです。
距離や頻度が原因なら
一方で、原因が距離や頻度のほうにあるなら、工夫だけでは苦しいことがあります。毎朝ちがう方向へ同時に出る必要がある、平日はほとんど毎日、二台分の移動がある。そういう家庭には、二台目を持つ検討に進む理由があります。頭の中ではもう一段上のグレードに、つい手が伸びかけている自分にも気づきます。ただし、その前にもう一枚めくっておきたい紙があります。維持費です。
2台目の年間固定費——買うお金だけではない
車の値段は、支払いの入り口にすぎません。とくに二台目は、一台目のときは一度きりだと思っていた費目が、もう一組ぶら下がってきます。自動車税、任意保険、車検、駐車場、タイヤ、点検、そしてガソリン。毎月の引き落としに見えている額は、その一部でしかありません。
| 費目 | いつ出ていくお金か | 見るときの目安(金額は断定しません) |
|---|---|---|
| 自動車税(種別割) | 毎年 | 軽自動車と普通車で差が大きく、排気量で段階的に変わります。 |
| 任意保険 | 毎月または毎年 | 等級・年齢・車種・補償内容で幅があります。2台目はセカンドカー割引の可否を確認。 |
| 車検 | 数年に一度 | 法定費用に整備費用が乗ります。古い車ほど整備の項目が増えやすいです。 |
| 駐車場 | 毎月 | 地域差がとても大きく、もう一台分の枠を借りられるかも先に確認。 |
| タイヤ・消耗品 | 数年に一度 | 走行距離が多いほど交換の周期が早まります。 |
| 点検・オイル等 | 半年〜年ごと | 定期点検やメンテナンスパックの有無で変わります。 |
| ガソリン(燃料) | 毎月 | 走る距離と燃費しだい。送迎中心だと短距離の積み重ねになります。 |
上表は費目と支払いタイミングの整理です。金額は車種・年式・地域・時期・契約条件によって変わります。実額・目安の幅は各社および各制度の公式情報でご確認ください。
年に一度の税金、数年に一度の車検やタイヤ交換は、毎月の家計簿には顔を出しません。だから、ならして月々に足しておかないと、「増えたのは車両代だけ」と錯覚してしまいます。任意保険は、二台目に「セカンドカー割引」が使える場合もありますが、適用の条件や等級の引き継ぎ方は各社で違います。軽自動車にすれば税金や車検の負担は軽くなりますが、家族四人で長距離を走る日があるなら、広さや安全装備との兼ね合いも要ります。駐車場も、もう一台分を借りると、地域によっては毎月の出費がぐっと重くなります。
持ち方の幅は、使う頻度で変わる
二台目と決めたとしても、持ち方は一つではありません。使う頻度に合わせて、幅があります。ここでも先に頻度を置いてから、持ち方を選ぶ順番にすると、迷いが減ります。
平日ほぼ毎日使うなら(中古かリースか)
平日ほぼ毎日、送迎と通勤で二台分がきちんと動く家庭なら、二台目も「持つ」形が現実的です。持ち方の中でも、初期費用を抑えたいなら手頃な中古車、毎月の支払いを平らにして税金や車検の山をならしたいならカーリース、という分かれ方になります。どちらが軽いかは、乗る年数と、走る距離しだいです。中古を安く持てば取得のお金は抑えられますが、古い車ほど車検や修理の波が読みにくくなります。リースは毎月が平らになりますが、走行距離の制限や、中途解約したときの扱いを先に読んでおく必要があります。国民生活センターも、カーリースは原則として中途解約ができず、解約できる場合でも解約料等が生じ、多くの場合は走行距離などの制約がつくと注意を呼びかけています。送迎で毎日こまめに乗る使い方は、距離が案外伸びます。制限の枠に自分の走り方が収まるか、契約前に一度あてはめてみてください。
カーリースは月々を平らにできますが、走行距離の制限、中途解約の扱い、残価の精算方法は各社で違います。送迎で距離が伸びやすい2台目こそ、月額だけでなく契約条件まで公式ページで見比べてください。ここは「必ず安くなる」枠ではなく、中古で持つ・持たないと並べて中立に検討するための一つの選択肢です。
週に数回なら、持たない形も
使うのが週に二、三回、あるいは習い事の送りだけなら、「持たない」という選び方も現実味を帯びます。近所の用事はカーシェア、雨の日の送迎はタクシー、という組み合わせです。所有すれば、乗らない週でも決まったお金は出ていきます。都度払いなら、使った分だけで済みます。ただし、使う回数が増えるほど都度払いは積み上がり、どこかで所有の総額を追い越します。境目がどこに来るかは、さきほど書き出した頻度がそのまま決めます。だから私は、持たずに済ませたい人にも、まず一か月の記録をすすめます。カーシェアの駐車場所が家から遠ければ、雨の朝の送迎には向かない、といった生活の相性も、記録をとると見えてきます。
わが家の決め方——1か月のメモと、月額の上限
最後に、わが家でやっている決め方を書いておきます。難しい計算はしません。順番だけ、先に決めておきます。
まず、これから一か月、実際の使い方をメモします。何曜日の何時に、どこへ、おおよそ何キロ、二台がどうしても必要だった日はどれか。頭の中の「たぶん毎日要る」と、書き取った記録は、思っているよりずれます。私の家では、必要だと感じていた日の半分ほどが、実は片方の都合をずらせば足りる日でした。逆に、水曜と金曜だけは、どう並べ替えても二台要る、ということもはっきりしました。
次に、増やしてよい月々の上限を、先に決めます。維持費まで足した二台目の負担が、この額を超えるなら今回は見送る、という線です。上限を先に引いておくと、店頭やサイトに並ぶ「月々」の数字に、気持ちを引っぱられにくくなります。
そのうえで、持つか・持たないか、持つなら中古かリースかを、一枚の紙に並べます。取得のお金だけでなく、毎月と毎年のかかりまで足して、同じ条件で見比べます。ここまでそろえて、はじめて我が家にとっての線が引けます。
- 回らない理由を、時間帯のぶつかり・距離・頻度の三つに分けた。
- 時間の重なりだけなら、送迎分担や時差通勤で回らないか先に試した。
- 2台目の固定費を、毎月・毎年・数年に一度に分けて書き出した。
- これから一か月、実際に二台必要だった日を記録することにした。
- 増やしてよい月々の上限を、車を見に行く前に決めた。
- 持つ(中古/リース)・持たない(カーシェア+タクシー)を同じ条件で並べた。
二台目は、家計にとって小さな決断ではありません。それでも、足りない理由を三つに分け、決まって出ていくお金まで書き出し、月々の上限を先に引いておけば、朝の慌ただしさに押されて決めずに済みます。わが家の一か月が教えてくれる数字は、どんな一般論よりも、私たちの暮らしにあてはまります。急がず、数字がそろってから線を引けば、それで十分です。保育園の送りに焦る朝も、いつか懐かしくなるのでしょう。それまでの数年を、どう乗り切るか……買った日より、買った後の毎月のほうが、ずっと長いです。